
ものがたり
この話は結婚相談所の門をたたいた35歳の女性が結婚への正しい知識を身につけ、苦難と困難を乗り越え成長したのちに幸せな結婚を手にするものがたりである。
登場人物
■主人公A子さん(35歳)
仕事にやりがいを持ち頑張ってきたキャリアウーマン。
年齢的にも「そろそろ結婚して子供欲しいなぁ」と考え始め、結婚に真剣な男性と出会えるという理由で結婚相談所に登録。
希望する男性の条件は「特にこだわりはない」と言いつつも、実は譲れない6つの条件を持っている。
■ゲンキさん(男性36歳)
A子さんが初めてお見合いを申し込んだ相手。
A子さんの申し込みをお断りした。
たくさんの女性からお見合いの申し込みが殺到している
■仲人士 髙橋宏仁(たかはしひろひと)
数多くの男女を幸せに導いてきた結婚相談のプロ。
全国の仲人士トップ100に選ばれた豊橋のカリスマ仲人士。
これまでのストーリー
年齢的にも「そろそろ結婚をして子供が欲しい」と、結婚相談所に登録したA子さん(35歳)。
数ある婚活方法の中から結婚相談所を選んだのは、時間効率を考え結婚願望のある男性とのみと出会いたいという理由から。
ぜいたくを言ったつもりもないが、結婚相手への条件を6つ挙げたところ、「そんなに条件を出すとお見合いが組みにくくなるよ」と仲人士から言われてしまう。
しかし結婚に対して絶対に妥協をしたくないA子さんは、「それでもその条件は譲れない!」と口答えをし、すべての条件に合う男性にお見合いの申し込みをするが、断られてしまう。
ショックを受けて次の申し込みが怖くてできなくなってしまったが、断られることなんて気にすることないんだと気づき、気持ちを切り替えて次の申し込みに行こうとしたA子さん。
しかし、仲人士から残酷な現実を突きつけられ・・・
第4話 「現実」
「A子さん」
私の問いかけに反射的に笑顔で振り向いたA子さん。
しかし、深刻そうな面持ちで話しかけた私の表情を見て、A子さんの表情が曇ります。
「どうしたんですか?」
不安そうにA子さんがこちらを見ています。
この時、私は心の中で二つの未来を想像し、葛藤をしていました。
A子さんに現実を伝えて起こりうる二つの未来をです。
ひとつはその現実を受け入れて考えを改めて婚活をし、幸せな結婚を手に入れる未来。
もう一つはその現実を受け入れられず退会をしてしまう未来。
A子さんがどちらの未来を選択するのかが正直分らず、躊躇をしていたのです。
もちろんあえて現実を伝えないという選択肢もありましたが、彼女の長い人生を考えた時、傷つくことになるかもしれないけれど今伝えるべきだと思い、その選択はしませんでした。
そうだ、たとえ辞めることになったとしても、現実を知るということは今後の彼女にとって必ずプラスになるはずだから、ここは心を鬼にしてでも言わなくては!そう思って、重たい口を開けることにしました。
「A子さんがお見合いを申し込んだゲンキさんなんですが、実は女性からの申し込みがたくさん来る人なんですよ。」
「えっ、あの人が?そんなにステータスが高いわけでもないですよね。」
「・・・。」
「でね、たくさんの申し込みが来た人って相手を選べる立場なんですね。
そうなると必然的に条件のいい女性から選んでいきますよね。」
「まぁそうですよね・・・。」
「え、ちょっと待ってください!
それってつまり私が選ばれなかったのは、私が他の女性より劣っているってことですか!?」
A子さんの目がキッと鋭くなりました。
「ゲンキさんの希望する条件で考えた場合、あなたより条件のいい女性が他にいたということですね。」
「それじゃぁゲンキさんの希望する条件って何だったんですか?高橋さん知っていますか?」
「教えてもいいけど、覚悟はある?」
「・・・。」
「どうぞ・・・。」
ついに現実を突きつける時がきました。A子さんはそれを受け入れることができるのか不安がよぎります。
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「ゲンキさんに申し込む女性の年齢は25歳~37歳くらいなんですね。」
「で、ゲンキさんが受諾している相手は全員20代の女性なんです。」
「・・・わかりますよね?」
「・・・」
「若ければいいってことですか?年齢だけで判断されてしまうんですか?」
「中身は見てくれないんですか?」
A子さんは35歳。
自分が年齢だけで判断されてしまったことに、憤りを隠し切れない様子です。
「ゲンキさんはお相手の年齢条件を『年下で』と言っています。」
「本来ならA子さんも条件に入るのですが、ライバルとなる他の女性が20代ばかりなので、残念ながらそちらを選ばれたのでしょう。これが現実です。」
「若ければいいなんて、そんな見る目のない男こちらからお断りですよ。」
見る目のない男から断られただけ、ということにして、
A子さんは自分が傷つかないように必死に自己防衛していたのかもしれません。
「でもさ、考えてみて。自分が選べる立場になったとしたら、少しでも条件のいい方を選ばない?」
「例えば年収300万と500万円の男性だったらどちらを選びますか?」
「年齢が35歳と45歳の男性だったらどちらを選びますか?」
「申し込んでくれた全員と会うことができないとしたら、やはり条件のいい方から選びますよね。」
「・・・。」
思い当たる節のあるA子さんは黙るしかなかったのでしょう。
なぜならA子さん自身、相手に対する条件をたくさん出していたからです。
自分も相手のことを中身で見る前に、条件でふるいにかけていた事に気づいたのです。
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「つまり私は若い子には勝てないということなんですね・・・。」
何かを悟ったように、A子さんはボソッとつぶやきました。
「残念ながらそれが現実なんです。」
「これはどんな美人でも覆すことができません。」
「男性に選ばれるのは、美人の40歳より普通顔の30歳なのです。」
A子さんの顔がだんだんと絶望の表情へと変わっていきます。
しかし私はもっとつらい現実を告げなくてはなりません。
「A子さん、子供を望んでいるほとんどの男性は、
35歳未満の女性を希望しているんです。」
35歳以上での出産を世間では高齢出産と呼んでいることもあり、男性は34歳以下の女性を希望するようになります。だからといって35歳以上では子供ができないのかといえば当然そんなことは無く、40歳になっても普通に妊娠出産は可能なのですが、出産リスクや妊娠の可能性を考えると、男性は35歳未満の女性を希望することになるのです。
残酷な話ですが、女性は35歳になった瞬間、婚活が非常に難しいものになってくるのです。
しかし、大切なのはそこで絶望などせず現実を受け止めること、そして、そんな自分でも結婚したいと思ってもらえる相手に出会うことです。
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現実を知ってしまったことで絶望するA子さん。果たして彼女は婚活を続けることができるのでしょうか・・・つづく
→成婚体験談「魅力探し編」第5話へ
※この話は実話をもとに、登場人物が特定されないよう脚色してあります。
仲人士 高橋宏仁
結婚相談のプロとして、幸せな結婚、そして幸せな結婚生活を送るための秘訣をアドバイスし多くの会員を幸せに導いている。
NPO法人全国結婚相談業教育センター正会員
日本仲人協会 豊橋南支部長
高橋宏仁結婚相談室 代表